「御社の乱れ正します!2」

現場

 建築士の役でした。俳優の醍醐味の一つに、私生活から大いによそ見が出来ること、があると思っています。職業、嗜好、思考、生い立ち、他にもたくさん…自分と近くて、最も遠い人間。それは面白さであり、怖さでもあります。なので現場前には「もう十分だろう!」の半歩先くらいまで勉強する気合いです、目分量です。私は直感型なのでいつも手当たり次第。今回は建築家という部分に強く惹かれたので、建築について多く考えていました。

 建築に興味を持ち始めたのは、この5年くらいです。大きく揺さぶられたのは、スペインのサクラダファミリア。「海外興味なし!」だった学生時代の私が唯一、いつか見てみたいなぁ、とぼんやり考えていた地です。「完成する前に見たい!」という願いを叶えたこと、海外を訪れる機会が何度かあったことなどをきっかけに、日常の景色にも、ふと視線を止めることが増えました(赤瀬川原平氏の"超芸術トマソン"の影響も過分にある)。

 私は特に天井画、シャンデリア、あしらい、上部になるにつれ、謎の構造になっていくビルが好きです。心がぐうっと鳴った時、無意識に目線を上げて歩いているからだと思います。

 そして街並み。スペインとパリでは同じ曇りの日でも全く印象が異なり、文化の違いを肌で感じました。フランス人の友人はパリを「pretty」と表し、とても愛しています。これは日本の「可愛い」とは違うのでしょう。「カワイイ」とも「kawaii」とも違う気がする。

 それでいうと、私の感覚では仏像が「pretty」の部類です。その土地に生まれ育った人間の、核に触れる感覚なのでしょうか。この辺りは文献を掘りたいところです。

 先日、散歩中に遺跡発掘現場の前を偶然通ってしまい、水飴のような雑談をすっ飛ばして見入ってしまいました。最近遺跡も気になっています。当時の人々が描いた大きなロマンと小さな日々を感じ取りたくて…

 なんだか話が脱線してきたので強引にまとめると、私の散歩と私の役づくりは似ています!寄り道、脇道、たくさん曲がっても、ちゃんとお土産を持ち帰って来れるところ。

 今回演じた町村さんも、きっといくつもの角を曲がって、たくさんの建築に触れて、あの場に戻ってきたのだろうと思います。私もまだまだ色んな角を曲がりそうなので、彼女の強さに背中を押してもらいました。どうもありがとう。

 最後に、私の好きな毎夕の視線を共有します。

 見上げると歩道橋、その上を電線が横切り、そのさらに遠くーー何処かから帰ってきたであろう大きな旅客機は、大変ぷりてぃなのです。

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